【論文抜き出し】遠藤(2022)発達の連続性と変化を問うということ:アタッチメント縦断研究に見るアポリア

 発達心理学において縦断研究は重要とされるが、現在その量は不足しており、主流となっているのはコホート研究である。 コホート研究は横断研究に比べれば、発達曲線を描くことができるという利点は存在するものの、発達の個別性を明らかにすることはできていない。

 また、アタッチメント研究において見解の一致する所としては「アタッチメント・スタイルの質は変化しうるものである」、「1歳時点でのアタッチメントがその後の精神病理や問題行動のかなり強い予測因子である」こと。 種々の問題はあれど、内的ワーキングモデルという補助線を引けば十分に意義はある。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdp/33/4/33_193/_pdf/-char/ja#page=1.00&gsr=0

【論文抜き出し】遠藤(2022)発達の連続性と変化を問うということ:アタッチメント縦断研究に見るアポリア

 発達心理学において縦断研究は重要とされるが、現在その量は不足しており、主流となっているのはコホート研究である。 コホート研究は横断研究に比べれば、発達曲線を描くことができるという利点は存在するものの、発達の個別性を明らかにすることはできていない。

 また、アタッチメント研究において見解の一致する所としては「アタッチメント・スタイルの質は変化しうるものである」、「1歳時点でのアタッチメントがその後の精神病理や問題行動のかなり強い予測因子である」こと。 種々の問題はあれど、内的ワーキングモデルという補助線を引けば十分に意義はある。

非現実的な楽観傾向は本当に適応的といえるか ——「抑圧型」における楽観傾向の問題点について——

研究1

 

問題

Taylorらは非抑うつ者の健常者において角に肯定的な自己評価傾向,出来事に対する過度の統制感,将来,他者に比して自分には悪いことよりも良いことが生ずるだろうと見積もる非現実的な楽観傾向が一貫して観察されることを見出した。これは肯定的幻想と呼ばれるものであり,精神的健康に結びついているとされてきた。しかし,陰性情動の自己報告と行動・生理指標が一致しない「抑圧型」と呼ばれる群が発見され,この抑圧型の群は陰性情動の自己報告は低いものの,行動・生理指標では抗不安群と同等かそれ以上に大きいとされている。

目的

特性不安尺度得点のみによって抽出した低不安群と,抑圧型と真の低不安群とを区別した場合を比較し,過度に肯定的なバイアスが真の低不安群においても見出されるかを検討すること。

方法

都内及び千葉県の専門学生,大学生,社会人356名(男性109名,女性247名),平均年齢21.8歳(SD=5.92)を対象とした。

質問紙 自己表象及び現実とゴールの間の不一致(佐藤・安田・吉村),ライフイベントの将来予測(Myers & Brewin, 1996),楽観主義尺度(戸賀崎・坂野, 1993),特性不安尺度(STAI),MC尺度(抑圧型と真の低不安群に弁別),抑うつ尺度(BDI, 林・滝本, 1991)。

 

結果と考察

 低不安群が29名,抑圧型が33名,高不安群が29名であった。自己表象に関しては現実の自己評定に用いた形容詞に占める肯定語の率を,現実とゴールとの間の不一致は理想,当為ゴールに対する評定との間の不一致率を指標とした。抑圧型において過度に肯定的な自己評価が見出され,他の群では抑圧型の混入によってこうした傾向が不当に高くなっていたことが分かった。ポジティブなライフイベントに関して,抑圧型は他群と比べ高く見積もり,ネガティブなライフイベントは他群と比べ低く見積もることが示された。

 

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【論文100本ノック -1】 小学生の認知的方略のパターンに応じた支援方法

小学生の認知的方略のパターンに応じた支援方法

斉藤千愛・山本獎

岩手大学大学院教育学研究科研究年報 第一巻 (2017) 25-38

 

問題と目的

 悲観主義者たちは楽観主義者に比べ不適応的であるとされてきたが,Norem(1986)は課題場面で悲観的に考えることで高いパフォーマンスを発揮する人々がいることを見出し,これを防衛的悲観主義者と名付けた。この防衛的悲観主義は認知的方略の一つであり,過去のパフォーマンスに対するポジティブな認知を持ちつつも,将来に対する期待が低い認知的方略であるとされる。この対となるのが方略的楽観主義であり,過去のパフォーマンスに対してポジティブな認知を持ち,将来に対する期待も高い方略である。また適応的なこれらの方略以外にも,将来のパフォーマンスに対してネガティブな認知を持ち,将来に対する期待も低い真の悲観主義や過去のパフォーマンスに対するネガティブな認知を持ちつつも将来に対する期待が高い非現実的楽観主義などが存在する。

 これまで防衛的悲観主義に関する研究は多くなされてきており,外山(2012)は達成目標によって防衛的悲観主義のタイプ化を試みており,習得接近目標が低く,取得回避目標が高い防衛的悲観主義者と,逆に習得接近目標が高く,習得回避目標が低い防衛的悲観主義者とでは学習達成が異なった。そのため,防衛的悲観主義者の中にも高いパフォーマンスにつながるものと,そうでないものが存在することを明らかにした。

 こうした研究の多くは大学生が対象であり,小学生を対象としたものは見られない。そのため,本研究ではそれぞれの認知的方略パターンに対して有効な教師による支援方法を明らかにするとともに,認知的方略の視点から児童支援の手がかりを検討することを目的とする。

 

方法

対象者 公立小学校の3-6年生218名。

尺度 外山(2015)の認知的方略尺度を元に修正した12項目。

 

対象者 担任教師8名

担任する児童に対してどのような認知的方略を用いるのか5件法で尋ねた。これは妥当性の確認のためであった。

また,教師による支援方法に関して菊池・山本(2015)の『担任教師の働きかけ分析カテゴリー』による8項目を用いた。

 

結果と考察

小学生のための認知的方略尺度は「計画」「過去の認知」「未来への不安」の3因子にまとめられた。信頼性は確認されたものの,教師の認知との相関は弱く,妥当性は確認できなかった。

 

有効な支援方法

・防衛的悲観主義

計画性の高い場合 「指示・判断・許可」「確認・言い換え・反復」「受容・励まし」

・方略的楽観主義   

計画性の高い場合 「発問・問いかけ」「提案・意見・感想」以外の全て

・真の悲観主義

計画性の高い場合 「指示・判断・許可」「確認・言い換え・反復」「受容・励まし」「婉曲的な叱り」

・非現実的楽観主義

「命令・禁止・否定」

計画性の高い場合 「指示・判断・許可」「受容・はげまし」「確認・言い換え・反復」「婉曲的な叱り」

 

課題

教師の認識との相関が弱く,児童が自身の認知をどう評価しているかといった点に左右されるため,妥当性について疑問が残る点。